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ドラゴノーツI・F(2)

作者:XXXR氏
備考1:ジン×ガーネット(「ドラゴノーツ」二次創作)
備考2:(現時点で非エロ)

一年前 火星

ジンはギオに会おうと、コントロールギアに乗って火星へと再突入を試みた。
激しい炎を避けるため、機体を浅いクレパスの中に着陸させたジンは、そこに倒れている人影を目にする。
それは、ぼろぼろの軍服を身に纏ったガーネットだった。
ジンは慎重にそちらへと近づき、恐る恐る声をかける。
「……大丈夫か?」
「はっ」
鼻で笑われた。満身創痍の状態で尚、彼女のジンに対する態度は高圧的だった。
「これが大丈夫に見えるかい? それに、お前に言われる筋合いはないよ、坊や」
そうは言われても、ジンとしてはこの状況で他にかける言葉も思いつかない。かと言ってさようならという訳にもいかず、どうにも困り果てた彼は、視線を逸らす。
するとそこに、折れた剣がある。彼女が使用していた日本刀だ。
吸い寄せられる様に、ジンはそちらへと近づく。ガーネットは辛そうに首を動かし、それでもまだ鼻で笑った。
「どうした? それでアタシを斬ってみるかい? ご覧の通り、今だったら坊やでも殺せるかもしれないよ?」
彼女は笑う。ジンを嘲笑う。その口から血を吐きながら、それでも、まだ。
「アタシが憎いだろう、坊や。あの二人を殺したのはアタシだ。そのアタシをどうしたい?チャンスじゃないか。さあ、殺せ。殺すんだよ」
ジンの脳裏には、この刀に斬り捨てられたアキラの姿が浮かんでいた。そう、確かに彼女はアキラを殺し、マキナの死の遠因を作った。しかし。
「……何してる?」
ジンは、それ以上動けない。視線は、ガーネットを捉えたまま。その手は、中途半端に上げられたまま。
何故か、そこから動けなかった。
「殺せって言ってるんだよ! 早く!! 早く殺せ!!!」
彼女は嘲笑う。それは心からの余裕の笑いだった。たとえ彼女がすでに死にかけであろうと、この場でイニシアティブを取っているのは彼女だった。何より彼女は、死を恐れてなどいない。もしもこの場でジンが迷い無く刀を振るったとしても、彼女は笑うのだろう。
いや、その時こそとびきりの笑みを浮かべるに違いない。
けれど、そんな彼女が。
何かをやせ我慢しているような、何かに対して強がっている様な、そんな気がして。
だからこそ、ジンは動けないのだ。

そうやって動けずにいる内に、彼も段々と冷静になってきた。
ガーネットを見る視線も、彼女の様子を観察するようなものになっていく。
じろじろと、割合不躾な感じに彼女を見る。現在の彼女の格好はいつにもまして扇情的だったが、何故だか下心のようなものは湧いて来なかった。
そして、ふと彼女と目が合う。
その瞬間、ジンには急に、彼女という人間、彼女というドラゴン、否、彼女という女性の、ほんの一端が理解できた様な気がした。
ああ、そうか。
彼女は死ぬのが怖くないのでは無くて、死にたいのだ。
生きるのが怖いのだ。
愛した男がいない世界で、どうやって生きていけば良いのかわからなくて、それが怖いのだ。
そう感じたら、心の中に少なからず燻っていた暗い何かがすっと消えていった。
刀を地面から引き抜き、側に落ちていた鞘に収める。
それを持って彼女に近づくと、隣に腰を下ろし、彼女との間に刀を置く。
そして、ようやく口を開いた。
「えっと……なんか、ごめん」
「何故謝る?」
「アーシムに……お前を愛している奴なんていない、みたいな事、言っちゃったから……」
「……」
またもやその場を沈黙が支配する。
上を見れば、まだ炎は激しく燃えている。と言うより、待っていて収まるのだろうか?
どうやってギオに接触しようかと、そんな事をつらつらとジンが考え始めた時、ガーネットが口を開いた。
「……気にするな」
意外な返事だった。

「多分、お前達の言った事は……正しい」
「でも、あんた……好きだった……んだろ? その、アーシムの……事……」
ジンもたどたどしく言葉を返す。
「ああ……好きだった……愛していた……」
ガーネットもジンから視線を逸らし、上を見上げる。これで、お互い相手に視線を向けずに話している形になった。こっちの方が良いような気がしたのだ。
「けれど……それはどうやらあの人には伝わっていなかったらしい……あの人にとって、私は道具か何かだったんだろうさ……」
ガーネットの目つきは、段々と何処か遠くを眺めるものに変わっていく。
「私は、どうすれば良かったのだろうな……」
「言えば良かったんじゃ……ないか?」
唐突に、ジンの中に言葉が生まれ、彼はそれを衝動に駆られるまま口にした。
ガーネットは、一瞬だけ、ちらりと視線をジンに向ける。
「あんた、好きだって、愛してるって口に出した事、あったのか? 多分、足りなかったのはそれじゃないかな。……そりゃあ、言ってもアーシムには届かなかったかもしれないけど……それでも言うべきだったと、俺は思う」
その言葉を聞いた時、ガーネットの中で、何かが揺れた。
それが何なのか彼女にはわからなかったし、すぐに忘れてしまった。
けれど、それは彼女の運命を変えたのだ。
「……お前が言うと説得力があるな」
「何でそう思うんだ?」
「お前いつもそればっかりじゃないか。トアー好きだー、トアー愛してるーって。……前から聞きたかったが、お前らあんな事大声で言ってて恥ずかしくないのか?」
「……うるさい……」
ジンが少し顔を赤らめ、そっぽを向く。それを視界の隅に捉えていたガーネットは、少しだけ笑った。
「あ、そうだ、それと……」
ジンがまたも口を開く。話題を逸らしたいという目的もあったが、これはどうしても彼女に伝える必要があった。
ガーネットもその辺りを感じ取ったのかは知らないが、また視線をちらりとこちらへ向ける。

ジンは、ギオにコントロールギアを切り離された時の事を思い返していた。直後に発生した激しい衝撃波に揺さぶられたものの、彼はしっかりと見ていた。
コクピットから放り出されたアーシムを、必死に庇おうとするガーネットの姿を。
「……きっと……最後には届いたんじゃないかな……あんたの、愛」
「……ふんっ。坊やに慰められてもね……」
ガーネットは少々無理矢理気味にツンとした表情を浮かべ、よっと声を上げて起き上がる。
「おい、大丈夫なのか?」
「アタシらの耐久力を、アガシオンみたいなまがい物と同列に扱うんじゃないよ。さてと、どうしたもんかね。とりあえず、服を変えるか……」
そう呟くと、彼女の体が光り……

服が、消えた。

ジンは数秒固まり、何とか目の前の景色を把握すると、顔を真っ赤に染め、奇声を上げて背を向ける。
「な、な、何てカッコしてるんだよ!」
「ん? ああ、悪いねぇ。……そう言えば坊や、お前、男だったねぇ。いや、あまりにも女々しいもんだから、忘れてたよ。あははっ」
ガーネットはジンの反応を見て、大声で笑う。
その顔にはほんの一時、まるでいたずらが成功した子供の様な、先ほどまでは無かった活力を滲ませていた。
しかし、背を向けていたジンは、それを見る事は無かった。

結局その後、平静を取り戻したギオは自力でジンと合流し、別の場所で待機していたトアと合流した彼らは、ライナやジークリンデに連絡を取ること無く、地球へと帰還した。
その後の彼らの動向を、ISDAは把握していない。
いや、彼らに似た面々の目撃情報はあったのだ。
しかし、彼らは四人連れだった。
何でも、紫のワイシャツに黒のズボン、ハイヒールのブーツを履いた、とんでもなくグラマーな女性がいるらしい。
その女性に関しては心当たりも無く、また目撃情報自体も酷く曖昧だったため(目撃者は皆男性で、鼻の下を伸ばして件の女性の事ばかり語っていた)、ISDAは他人の空似と判断し、その四人組を探す事は無かった。
そしてその後一年間、カミシナ・ジン達は隠遁生活を送る事になる。

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