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『秘密結社のつくりかた』 第○話 女幹部ルアラのつくりかた

作者:初代スレ558氏
備考1:女幹部
備考2:現時点で非エロ。「いつものエロを抑えて、かなり乙女チックですので、そういうのが苦手な方はスルーしてください」(作者氏)

「ルアラ、今日こそ引導を渡してやる」
メタリックシルバーのコンバットスーツを装着したフレイダーが、
青白く光るレーザーブレイドでわたしの肉体を切り裂かこうと近づいてくる。
すでに満身創痍。黒革のボンデージスーツから露出した肌は擦り傷は数知れず。
武器である鞭を避けられたとき、私の命運は決まった。
ああ、ベリア様、ベルガ様、志半ばにして倒れることをお許しください。
愛しの将軍を胸に思い描き、その時を眼をグッとつぶって待つ。

しかし、いっこうにその瞬間がおとずれない。
片目をあけるとそこに褐色の肌、みかけは十代の半ばくらいの少年がフレイダーとわたしの間に立っていた。
「そこまでです」
フレイダーのレーザーブレイドはその剣先を真っ暗闇の異次元空間に吸い込まれている。
黒いボディスーツに身を包んだ少年、わたしの副官であるジミィルであった。
ジミィルはどんな影にでも潜りこめる能力を持つ。影を異次元空間として使用する能力らしいが詳しい理屈はわからない。
「フレイダー、退いてはもらえませんか。我々の作戦は失敗しました。今回はそれでいいでしょう」
「フン、まあいいだろう。いくら悪とはいえ、お漏らししそうなほど震える女を殺す趣味はない、ルアラ命拾いしたな」
「な、なにを誰が……震えているっていうのっ」
憤慨するわたし、フレイダーがマスクの奥でニヤリと笑みをこぼしたような気がしてホントにムカっときた。

「次はないぞ、覚悟しておけ」
「ま、待ちなさい」
そういうとフレイダーはこちらに背を向け、ゆっくりと振り向くことなく歩き去った。

「また、負けたぁ」
フレイダーがいなくなると、緊張の糸が解けたのかその場にわたしはへたり込んでしまう。
「そうですね、けれど取り返しのつかないことにならず幸いでした」
「それはわたしが弱いと責めているのかしら、それともわたしのピンチを助けた自分を褒めてっていってるの?」
「いえいえ、ただルアラ様がご無事で本当に良かったと安堵しているだけですよ」
ジミィルの物言いはいつも癇に障る。
実をいうと、わたしはこの褐色肌で可愛らしい顔つきの少年に何度も助けられているのだが、
どうも素直にありがとうといえないのは、こいつの慇懃無礼な態度がムカツくからに違いないと思っている。

「あんた、また私の影に入っていたわね。プライバシーの侵害よ、いつもやめてっていってるでしょ」
「いや、その今回はそれでお救いすることができたわけですし……」わたしはジミィルをジッと睨む。
「……ええと、すみません、次からはやりませんのでお許しください」
仕方なさそうに謝るジミィル。彼のこの態度はよけいにわたしを苛立たせる。
「そう、ならいいのよ。わかっていると思うけど、わたしに触れていいのはベリア様とベルガ様だけなんだからね」
そう、大好きなお二人を思い描くと、心がポカポカとしてくる。
「はい、よくわかっていますよ。ボクはルアラ様の副官ですから出過ぎた真似は決していたしません」
「よろしい。一応言っておくけど、わたしに変な感情を抱かないでね。わたしの身も心もすべて将軍様たちのものなんだから」
「それを聞くのは今回で8回目ですけど……ああ、ええ、わかっています。
 そうですね、心の奥底でお慕い申し上げるだけにとどめておきます」
そういって白い歯をキラリとさせながら笑うジミィル。何がお慕いだ。何とも思ってないくせに……コイツはまったく。
ああ、キライなとこがもう一つあった。わたしに子どもをあやすように接するところだ。
どうせお荷物、無能な上司としか思っていないのだろう。
「もう、基地に帰るわよ……ってあれ? ああ、もうっ、腰が抜けて立てないじゃない。ジミィル、わたしをおぶりなさい」
「あれあれ、わたしに触れていいのはベリア様とベルガ様だけじゃなかったんですか」
ニヤニヤと笑うジミィル。ホントに頭にくる。こいつ、いつか締め上げてやらなきゃ。
「だから、そんなわたしに触れる機会を与えてあげようっていうのよ。感謝しなさい」
「はい、はい」
ジミィルはそういいながらも、わたしの眼の前で屈むと軽々とわたしをおぶってみせる。
「変な気起こしたら承知しないからね」
「はいはい、って。ああ、すごい。柔らかくて大きな胸が背中にあたって気持ちいいです」
「変態っ、死ね」
ジミィルの頭をパシっとはたく、ああ、最悪。
いつも作戦の邪魔をするフレイダーに、わたしをバカにするジミィル。
早くベリア様とベルガ様にお会いして慰めてもらいたい。


そう、ここまではわたしにとってはいつもの日常だった。
この時のわたしは、この後に待ち受ける運命を想像さえもしていなかった……


『秘密結社のつくりかた』 第○話 女幹部ルアラのつくりかた 



女王アウルによって結成された秘密結社ゲルドは、世界征服を目的とした組織だ。
わたしはその組織の幹部として一年前から頑張っている。
わたしは下級戦闘員から出世してきたわけでも、いきなり幹部にスカウトされたというわけでもない。
この世界を認識したときから、わたしは既にこの組織の幹部だったのだ……

そう、わたしには一年以上前の記憶がない。この話をジミィルや他の部下達にすると気の毒そうな顔をするが全然気にはならない。
なぜなら、わたしのことをとてもとても大切にしてくれる素敵な男の人が二人もいるからだ。
右将軍ベリアと左将軍ベルガ、彼ら二人は私にとって父であり兄であり、また少しうぬぼれるなら恋人でもあった。
ベリアは細身で長身の男性でとても中性的な顔をした人で、ベルガは同じく長身だけど、筋肉質で男らしい顔立ちをしている。
二人とも何をやらせても優れているけれど、ベリアは作戦立案といった知的な作業を、ベルガは実際の戦闘を肉体作業を得意としていた。
性格もベリアは繊細で、ベルガは豪快だった。二人はわたしにとても優しかった。
わたしが作戦を何度失敗しても許してくれるし、何か不安なことがあったら傍にいてくれる。
いつも優しく微笑んでくれるし、包むように抱いてくれる。わたしは彼らに愛されている、そう思っていた。

ちなみにアウル女王陛下はみたことがないし、声も聞いたことがない。
いつもカーテンに覆われた奥の玉座に坐っていて、彼女の命令はすべて二人の将軍たちを通してしかわたしたちにこない。
わたしにとっては雲の上の天上人である。ただ、会ってみたいとかそんな感情はまったくといっていいほどなかった。
口が裂けても言わないけれど、わたしは女王などどうでもよくベリアとベルガの両将軍がいればそれでよかったのだ。

あと、憎らしいっていえば自由と正義の味方とかいって、わたしの作戦をいつも邪魔するフレイダー。
いつもわたしの部下である戦闘員や合成怪人をレーザーブレイドで切り裂いていくのだ。
わたしも今日のように何度、命を落としそうになったかわからない。
あいつが死ねば、世界征服に一歩近づくのに……いつも心の底から悔しくて、何度涙をこぼしたかわからないくらいだ。


ベリアが作戦を立てて、ベルガかわたしが実行に移し、フレイダーに阻止される、
わたしが作戦失敗した時には、ベリアとベルガが優しく慰めてくれる……それがわたしの日常だった。
そう、わたしは世界征服を叫びつつも、そんな予定調和な毎日がずっと続くと思っていた。


そんな日常がガラガラと崩れ去ったのはいつものように(いつもじゃホントはダメなのだけれど)、
フレイダーによって作戦が失敗に終わり、トボトボと女王陛下と将軍たちのいる玉座の間に帰ってきたときのことだった。

いつも絹のカーテンから影しかみえない女王アウルと二人の将軍しかいないはずのその広間に、
もう一人、姿形はとても見知った、けれど一度も会ったことのない女性がいた。
輝かんばかりに綺麗なストレートの黒髪、青くクリクリとした瞳が印象的な整った顔立ち、
彼女の着たラフなシャツを押し上げる豊かな胸、それを際立たせる抜群のプロポーション……
ちょっと、自慢も入っているかもしれないけれど、どこからどうみてもそれは「わたし」だった。

いつもは冷静なはずのベリアとベルガが「わたし」を取り囲んで話しかけていた。
「今まで、どこ行ってたんだ。君がつくった組織だろう。責任を持ってくれ」
「死んだはずはないと思ってたが……長い付き合いだろ。消えるんなら一言くらい何か言ってからにしてくれよ」
問い詰めているようだが、二人の顔をみると嬉しさが隠し切れないという感じだ。
「あたしもちょっと一人になりたい時くらいあるっての。しっかし、驚いたわ、まだこんな遊び続けてたんだから」
声はわたしと同じ。けれど、喋り方とかは彼女の格好と同じくラフでわたしとは全然違う。
わたしなら、絶対にこんな風には喋れないだろう。
「相変わらず、飽きっぽいな。君が帰ってくると思って、現状を維持し続けたんだぞ」
「まぁ、しかし嬉しいよ。これでまた三人だ。ハハハッ」
ベリアは小言をいっているが、強く責めるつもりもないし、呆れている感じもどこか演技っぽい。
ベルガはもう、豪快に笑っていて喜びを隠そうともしていない。
「だって、世界征服ってすごくいい響きじゃない?10年前にTVでこの言葉聞いたときこれだと思ったわ。
 ま、準備の三年、実行にうつして二年で飽きがきちゃったんだけどね……まあ、そんなことはどうでもいいのよ。
 すっごく、面白いことみつけたの。これなら、そうねぇ20年くらいは楽しめるかも」

あの「わたし」が何を言っているのかわからない。
けれど、彼女がいっていることは私にとって、とても怖いことのような気がした。

「相変わらずだな、そんなこといって……5年持てばいいほうじゃないか」
ベルガはやれやれといった口調でそういうが、口元はニヤついたままだ。
「それで、この組織はどうするんだ。末端まで含めて数千人、ちょっとした規模だぞ」
ベリアは冷静に「わたし」にそう告げるが彼女の答えは素っ気無いものだった。
「え、どうでもいいじゃない。このまま三人でドロンしちゃうとか、適当なのに任せるとか、
 解散するとか、あ、ベリアが残るっていうならいいわよ。ベルガと二人で楽しむから」
「そ、それはないぞ。もう君のいない毎日はこりごりだ。どれだけ私が……」
ベリアは次の言葉を出す前に恥ずかしいのか顔を赤らめてしまう。
「なぁに、ねぇねぇっ、その次の言葉が聞きたいなぁっ」
ニヤニヤとしながら、「わたし」は猫なで声でベリアにグイっと迫る。
薄々と、どういうことなのかを感じとりながら、あの「わたし」にわたしはなりたいなと思った。

「寂しかった、君のいない毎日は本当に。君がいないと世界はこんなに色褪せるのかと思ったくらいだ」

赤面しつつ一気にまくしたてるようにベリアはそう言った。こんなベリアをわたしは知らない。
いつもの落ち着いた彼からは想像できない。本当に、彼女がうらやましい。

「えへへっ、正直でよろしい。いつまでたってもベリアは可愛いんだから。
 ところで……さっき『現状を維持』っていってたけれど、そうじゃないみたいねぇ。
 寂しいからって、ああいうのはあたし、どうかと思うなぁ……」
そういった「わたし」の目線がわたしに向いた。
「「えっ」」
同時に声をあげて、まさか、しまった、といった表情でこちらに振り向くベリアとベルガ。


……泣きたい気持ちを、問い詰めたい気持ちを殺して、極めて事務的にわたしは言う。
「報告が遅くなって申し訳ありません。お取り込み中のようでしたので。
 残念なことに、またもやフレイダーによって作戦は失敗に終りました」
「……そ、そうか」
ベリアはその言葉を発したあと、何も言わない。気まずい沈黙……
今、将軍たちの気持ちが、少しでもわたしに……同情とかでもいいからむいてくれているだろうか。
もし、二人の気持ちが、「わたし」にわたしをみられたことを後悔しているだけなら、胸が張り裂けてしまうかもしれないと思った。

長い長い静寂、それを破ったのは「わたし」だった。
「ねぇねぇ、ベリアにベルガったら、お互いの自己紹介のお手伝いくらいしてくれてもいいんじゃないの」
「えっ……」
「あっ、そ、そうだな」
口ごもる二人。わたしだけの二人だったはずが、心の中でどんどんと崩れていくのがわかった。

「もう、情けないんだからぁ、責任とらない男は嫌われるぞ。
 えっと、あたしはアウル、ここでは女王アウルだったかな、この組織のボスをやってます」
どこまでも軽い口調でいう「わたし」、アウル女王の名を名乗ったことには少し驚いたが、予想の範囲内ではあった。
「わたしは、わたしは……秘密結社ゲルドの戦闘実行部隊の長をやらせていただいているルアラです。
 お、お会いできて光栄です。アウル女王陛下」
「ふーん、すごいわね。うん、すごいすごい。この状況でここまで平静を保っていられるなんて感動だわ」
この人はわたしとは姿形は同じでも全然違うのだなと思う。
さっきからの会話を聞いていても、どうやら外見の年齢と実際の年齢は違うみたいだし、
目覚めてからようやく一年になろうとする自分とは比べるべくもない経験の差から生まれるものなのだろうか。

「それでさ、あたしとあなたってすっごく似てるよね。これってあなたは疑問に思わないのかな?」
「アウルッ」
ベリアは彼女が喋るのを必死で止めようとする。
薄々とは理解しつつあるが、やはり全てを知っている彼の口から聞きたいのはわたしも同じだった。
「いえ、ベリア様。わたしもとても疑問に思っています。
 なぜ、わたしが女王陛下と似ている……いいえ、うりふたつなのか。
 知っていらっしゃるなら、ぜひお教えいただきたいです」
「ルアラ……いいのか。多分、とても辛い思いをするかもしれないよ」
「はい、それでも構いません」
その言葉に何かを諦めたかのように小さく首を振るベリア。
けれど、やっと覚悟を決めたみたいで、組織のことを、そしてわたしが何者かについて話しはじめた。

それはとても長い、実際に数千年にわたる話であったが、多分、要約するとこうだ。
アウルとベリア、ベルガは現代と比べるべくもないほどに科学技術が発展した超古代の王国の出身で、
ベリアは当時から科学者であり、ひょんな偶然が重なり不老不死の技術を開発したそうだ。
永遠に生きられる、超古代においてもそれは見果てぬ夢だったらしく、ベリアはとても喜んだらしい。
その栄誉ある施術を、まずベリアは幼馴染であったベルガとアウルととも自分にも施した。
そんな矢先、どこかのバカが国を一発で吹き飛ばすような爆弾を破裂させ、一瞬にしてすべてが消し飛んだという。
三人も消し炭になったはずだが、ベリアの開発した不老不死の技術は冗談みたいな再生力を持っていたらしく、
数時間もたつと元通りの肉体にもどったという。

永遠に若いままの身体で三人は一緒……最初は喜んだが、百年もすると生きること自体に飽きてしまうものらしい。
とくに生来の飽き性であったアウルはひどく、ただただ楽しいことを探し求め、世界を、永き時を、渡り歩く旅がはじまったのだという。


今回の秘密結社も、その一つらしい。
ベリアが説明している時に、アウルは笑いながら秘密結社の後ろに「ごっこ」をつけたのには、さすがに腹が立った。
わたしを含め、世界征服に命を賭す自分たちが彼女にとってどういう存在なのか、とてもよくわかった。
と……話がそれた。彼女がいう「秘密結社ごっこ」を三人が楽しんでいた時に事件が起こる、アウルが失踪したのだ。
ベリアは言葉をにごしたが、数千年一緒にいてもベリアとベルガは彼女を愛しているらしい。
数日や数ヶ月もどってこないことは今までもあったそうだが、一年以上ともなると初めてのことだったようで。


半狂乱になったベリアは彼女から採取していた細胞からクローンを造ることにしたそうだ……そう、それがわたしである。
急成長させた後、組織で生きるために必要な知識を植えつけてわたしを覚醒させたのだそうだ。

それからはわたしにも記憶があるから説明できる。
わたし――ルアラははこの一年間、とても二人に可愛がられ、何も知らずに二人の愛に溺れた。
今日、この時、ルアラがアウルの代わりだと気付くまでは…………

「……というわけだ。なんというか、その、すまない」
「うん、最低。今、謝ったことも含めてあんたは最低。あ、ベルガも同罪だから。ひとりだけいい子ぶらないようにね」
アウルは本気で怒っている。わたしの存在を決定的に脅かす人で、彼女があらわれなければどんなによかったかと思うけれど、
彼女がこんな風に怒ってくれるのは嬉しかった。

「で、どうするの。責任とってあんたたちがこの子の面倒みる?あたしはいいわよ、一人でも楽しむから、好きにやってちょうだい」
「いや、それは……」
「そ、そうだ、ルアラも連れて行くってのはどうだ。これまでは三人だったが四人ともなればもっと楽しくなるさ」
ベルガの提案が私を今日、一番に傷つけた。
どう考えればホンモノと、ホンモノの彼女にしか興味がない男二人と一緒にニセモノの私がいられるというのか。
悲しくて、悔しくて、今まで我慢しつづけた涙がボトボトとこぼれていく。
「え、なんで。ああくそっ、もう……」
ベルガは自分の思いつきがなぜわたしを泣かせたのかわからず、自分の髪をグシャグシャと掻く。
こんな仕種をみるのもはじめてだ。ホント、情けないヤツ。
ベリアやベルガのみせかけの優しさにわたしは騙されていたのかもしれない。

「ああ、こんなことになるのわかってただろうにね……。
 数千年生きてきたけど、こいつらをここまでバカだと思ったのは初めてだよ……」
そういうと、今までみたことないような真顔になって、わたしに話しかけてきた。
「ねぇ、ルアラ。泣きやめなんていわない。そのままでいいから聞いて。あんたはどうしたい?
 その腰にある鞭でこいつらをぶちたいっていうならいくらでも、やっていいよ。
 別に殺したいんなら何度殺してくれても構わない。まあ死なないけど、痛みはあるから十分拷問になるさ」
もう一人の「わたし」は最初はどうかと思ったけど、イイ人みたいだ。
自分と同じ姿形をしたわたしだからこそ、こんなにも強く同情してくれているのかもしれないけれど。

わたしの答えはもう決まっていた。だって、もうわたしが生きる意味なんてなくなったのだから。
「……殺してください。わたしの役目は終ったんでしょう。
 そうですよね。ベリア様、ベルガ様。女王陛下が……アウル様がみつかったんですから。
 代わりのわたしが生きていてもお邪魔でしょうし、こんな辛い思いをして生きていくのも嫌ですし……」
「ルアラ……」
私の名を呼んで絶句するアウル。
ベリアとベルガはいたたまれないような表情のまま、どうしていいかわからずオロオロとしている。
ああ、ホントに幻滅だ。こんなダメ男に惚れこんでいた自分が嫌になる。
この二人のためにならどんなことも厭わずにやった。何も罪のない人々を殺すことにも何のとまどいも生まれなかった。
そう、私の存在の全てがこの二人だったのだ。それなのに……

「そうかい……ルアラ、あたしはそれでも生きなきゃなんていわないよ。
 生きるってことに、死ねないってことに飽き飽きしてるからね。
 どうやら、クローンのあんたは不老不死じゃないようだし、あんたは死ねるみたいだ。
 好きな、いや好きだった男に殺されるってのもイイ死に方かもね」
そういって、アウルはベリアの腰に吊り下げられた細身の剣を抜いた。そして、ベリアに押し付けるように持たせる。
「ベリアがルアラを殺しな。あんたが彼女をつくったんだ。ケジメはあんたがつけるのが筋ってもんだろ」
「そ、そんな。そこまでは……」
躊躇するベリアの顔面を、アウルは握り締めた拳で思いっきりぶん殴った。

鼻骨が折れたのか鼻血をボタボタと出すベリア。色男が形無しだ。
「ゴ、ゴフッ」
鼻はすぐに再生したが、鼻血を垂らしたベリアは何とも情けない。
「ねぇ、ベリア、世界征服とかいって遊びで無辜の人間を何十万人と死に追いやったあたしが言うセリフじゃないけどね。
 人の命で遊ぶ時は覚悟しなよ、あたしは殺した人間たちの家族に恨まれるのは当然だと思っているし、
 捕まって何十年と気が狂うほど犯され、殺しつくされる覚悟もできている。遊びであろうといつだって真剣じゃなきゃね」
理屈がどこかオカシイように思うけれど、やっぱりこの女性はカッコいいと思う。
わたしは彼女と同じ顔だけど、こんなに真剣なキリっとした表情はできない。


ベリアはやっと覚悟を決めたのか剣を握ると私にゆっくりと近づいていくる。
「おいおい、どうなってんだよ。何か方法はないのか、もっと、みんなが楽しくなるような、その、なんだ……」
どうしていいのかわからずにベルガはその巨体を右往左往させている。
「ルアラ。君は私を恨んでくれてかまわない、
 何をいってもいいわけになるかもしれないが、君のことを娘のように愛しく思っていたのは本当だ。信じて欲しい」
誠実な顔をしていうベリア。しかし、わたしにはどうも白々しく感じてしまう。
一年にも満たない恋だったけれど、もう冷め切ってしまっているみたいだ。


「はやく殺してくださいベリア様、わたしもこの一年あなたとベルガ様のお優しさに包まれて、とても素晴らしいときを過ごせました。さぁ、お早く。
 これ以上、あなたたちに幻滅する前に、サクっとあの世に送ってください」
「すまない」
ベリアがわたしを斬り殺そうと、剣を振り上げた。
ああ、なんだろうなぁ、わたしの人生って。脳裏にこの一年の思い出が駆け巡る。
出てくる人たちは決まっていた。ベリアとベルガ、憎い憎いフレイダー、そして……



                                                                           つづく

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