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メビウスダブルロード ~始まりの序曲、違う兄妹の道~

作者:MP-500氏
備考1:
備考2:人々の幸福のために作られたナノマシン。しかしもたらされたのは‥‥。

時は今この時代より遥か未来、未来年号レニアスX年……。
その時代、人々は終に人類全ての夢である『永遠』を手に入れていた。
『レニアスの長寿薬』
時の科学者レニアス=ダブルロードは、己の名を命名した小さな丸薬を作り出した。
『半永久ナノマシン』
小さな水晶玉に数多にプログラムされた機械と言う名の長寿薬が、人を不老の体へと変えたのだ。
水晶玉の中に何本も張り巡らされた、メビウスの線……。
永遠を手に入れた事で人々の心の欲望は緩和され、数多に起こる無駄な争いを止めたかに見えた……。
そう、見えた……。


メビウスダブルロード ~始まりの序曲、違う兄妹の道~


永遠とは何処から来るのだろう?
それは人が永遠の命を望む事が全ての始まりにして、残酷な未来を夢見る始まりなのかも知れない。

「終わりだな……もう終わりだ……」
男が一人、太陽を背に女を見ている。
白い髪。青い瞳。赤く揺らめく炎に似た熱い声。

「終わり……そうかも知れない」
女が一人、冷たい大地を背に男を見ている。
黒い髪。赤い瞳。透き通る水に似た冷たい声。

「俺と共に来い」
太陽を背にしている男は、手にした細長い剣を振り翳し、地に伏せる女に向けて走り出す。
白い刀身の中心に刻まれる、青い一筋の線。それは青空を連想させる。

「交わる事は許されない」
地に伏せていた女は、手にした細長い剣を振り翳し、太陽を背にする男に向けて走り出す。
赤い刀身の中心に刻まれる、黒い一筋の線。それは夜空を連想させる。

「貴方さえ……この世に生まれ来なければ……」
「お前の風を何時までも感じたかった……俺を許してくれ……」

白と赤。二つの光は激しい音と共にぶつかり合う。
それはまるで、絶望の音を奏でる演奏の序曲のようだった……。

∞―――――∞―――――∞―――――∞―――――∞

「博士」
「ロイ君か?」
まん丸の眼鏡をしていた男は、手にしていた本を机に置いて立ち上がる。
優しいその視線は、声を掛けたロイと言う青年を見ている。
彼の名はレニアス=ダブルロード。永遠を研究する科学者。
「お早うございます博士。昨日の解析データを持って来ました」
「ふむ……ん、反応は上々のようだね。体に違和感は無いかい?」
「痛みも拒否反応も見受けられません。これはもう成功したも同じですね」
笑顔で言う青年の名はロイ=ロードスター。レニアスの一番助手にして、彼の実験体第一号。
「嬉しそうに言うね君は、怖くは無いのかい?」
「恐怖は過去に捨てて来ています。僕の全ては彼女ですから」
ロイは綺麗な白髪を揺らすと、レニアスに頭を下げて扉の外に消える。

「レニアス……」
「やあ……今日は体の調子がいいのかい?」
ロイが消えたドアを見て立ち尽くしていたレニアスは、優しい笑みで横を向く。
そこに見えるのは、一人の女の姿。
「レニアス……愛している」
「私も愛しているよ」
レニアスは彼女の側に近寄ると、その体を抱きしめる。
そして、耳元で囁いた。
――お前の病気は私が必ず治す。

∞―――――∞―――――∞―――――∞―――――∞

風を感じる時がある。

木の日陰に寝そべると、涼しい感触が頬を撫でる。
木の枝が揺れると、枝と葉が奏でる音が聞えてくる。
草木の間から覗く、数多の太陽の光……。
それはまるで、その演奏を照らし出す無数のスポットライトのようだ。
そう……それは、青年にとって至福の時。

「お兄様」
芝生の上に寝そべっていたロイは顔を上げる。
体を起こし、声がした方に視線を送る。そこに見えるのは、一人の少女の姿。
「お兄様。嬉しい……同じ時の中に休息を得られた……」
少女がロイに満面の笑みを投げる。黒い髪が風に靡き、太陽の光がそれを輝かせる。
彼女の名はレン=ロードスター。レニアスの二番助手にして、彼の実験体第二号。
ロイとレンは血の繋がらない義兄妹の関係。
「あっ……」
「レン!」
小走りに走り寄って来たレンがよろめいたのを見て、ロイが慌ててその体を支える。

トックン……。

心臓の音が聞える……レンの奏でる鼓動が、ロイの腕から耳に伝わる。
「無理しちゃ駄目じゃないか」
「平気です。お兄様に会えたから」
暖かい腕の感触を感じる。ロイの腕が彼女の背中を支え、彼女の心は満たされる。
そう……それは、少女にとって至福の時。

青年が少女に語りかける。

――僕か必ずレンの体を治してあげるからね。

少女が青年の言葉に頷く。

――私はお兄様を信じています。

二人の笑顔が交差して、その場に暖かい風が吹いた。

∞―――――∞―――――∞―――――∞―――――∞

絶望とは、時に奏でる音と共に姿を現す事がある。

ガチャァン!
地下の暗い研究所で、その音は聞えた。

「うわぁぁぁ!」
「博士! 止めてくれレン!」
ロイの体に博士がぶつかる。
ぶつかった博士の眼鏡は割れ、その頭から一筋の血が出ている。

「お兄様……」
「レン……レン!」
レンの黒い目から赤い水が流れだし、その瞳を赤く染めて行く。

薬が完成し、世界に無償で配られて半年。それは突然起きた。
数多に世界に放たれた薬の約半数が、プログラムの暴走を引き起こしたのだ。
そして、暴走を起こした全てのナノマシンは、女の体に宿った物だけだった。

その暴走を仕組み、世界を混沌に落とそうと企んだ者が居た……。
それは……。

「レニアス……愛しているわ。永遠に……」
女は愛して止まない、病気を治してくれた男に微笑み掛ける。

「何故だ! お前の体を治したのは! こんな事をさせる為じゃない!」
男は自分を裏切り、ナノマシンに死の暗号をプログラムした女に叫ぶ。

ルコ=ダブルロード。
後に、彼女は悪の最たる人物として、世界に名を轟かせる事になる。

「お兄様、お兄様……苦しい、苦しい……」
「レン! お願いだレニアス! レンを元に戻してください!」
苦しそうにレンが自分の体を抱き、地面に両膝を付いてうずくまる。
その姿はナノマシンの暴走により醜く歪み、今にも壊れてしまいそうに見える。

「もう手遅れ、新たな人類に代わるか……死ぬかだけ、そして……母なる力の全てで、
男と女の入り混じる混沌とした世界を変えて見せる。」
ルコは苦しむレンを見て薄笑いを浮かべ、そう言い放った。

――世界は母なる力に落ちるべくして、生まれたのだから。

∞―――――∞―――――∞―――――∞―――――∞

「うあぁぁぁ!」
「どうしたレン!」
レンが急に立ち上がる。右手を大きく広げ、天井に向けて振り上げる。

バシュン……。
音がした……そしてそれは、レンの体の中から姿を現した。

赤い剣。その剣はまるで血の色のように赤く、刀身を闇のように黒い線で覆う。
悲しみと苦痛から生まれたその剣は、絶望の黒い光を放つ。

「素晴らしい赤……これから起こる、女による世界の創造を映しているようだわ」
ルコが呟く。優しい視線でレンを見る。その瞳は、一切の罪悪感を感じる事の出来ない妖艶さがある。

「嫌ぁぁぁ!」
レンが右手に持った剣を見て悲鳴を上げる。
己の中から現れたその剣を見て、恐怖で悲鳴を上げる。

彼女はもう……永遠の生命を通り越した唯の兵器になっていた。

「うわぁぁぁ! よくもレンを!」
ロイがルコに飛び掛る。手には足元に落ちていた鉄パイプが握られている。
それはもう、ルコの顔面を捉えようとしている。

ザンッ……。

音がした……それは、ロイにとっての絶望の音だった。
「レ……ン?」
「お兄様さえ居なければ……」
絶望の声、自分の体に走った痛みと共に、ロイはその言葉を聞いた。

――私は人間のまま死ねたのに。


∞―――――∞―――――∞―――――∞―――――∞


ザンッ……。
音が聞えた。その音は希望を照らし出す太陽の光のように……。

「きゃぁぁぁ!」
「終わりだな」
男が地面に倒れ込んだ女を見る。その女の体は人間の体ではなった。
両肘から後ろに突き出る剣。それは綺麗な弧を描いて長く伸びている。

「もう苦しむ必要はない、心を素直に表せ」
「はい……」

パキィィィン。
音が聞えた。その音は女に見られた憎しみの表情を緩和させる。
白い刀身の中心に刻まれる、青い一筋の線が出す優しい光が女を包む。

「ありがとう」
女の顔が笑顔で一杯になり、男に体を預ける。
「すぅ……」
同時に、静かな寝息が男に聞える。

その寝息を聞きながら、男は静に空を見上げる。
見上げた先の空に映る女の顔を見て、男は呟く。
「お前が悪の道を進むと言うのなら、俺は何時までも正義と言う名の仮面を被ろう。
俺は何時か、必ずお前の元に辿り着く。それが俺がお前に与えてしまった苦しみを感じ、そして……」

――罪の償いになるのだから。
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