俺(コードネーム:ブルー)が外回りから勤務先の法律事務所…地下には有事の際の司令室とかあったりするのだが…に戻った時、思わず目を疑った。
無法の限りを尽くしたコイツが、法律屋に用事などあろうハズがない。
しかも悪の幹部らしくなく、優しげに赤子まで抱いていたりする。
「何でお前がここに居る?」
「客に対して失礼だな。まぁ法律上の相談があってな。民法779条、認知についてだ。」
「その抱いている子供か…。で、なんでわざわざウチなんだ?」
「冷たいことを言うんだな。パパ。」
周りの空気が凍る…。まさか、あの時の…。
「あんなに激しく愛し合った仲じゃないか。」
…愛し合ってない。一方的な行為だ。しかもお前の。
一年程前、こいつ等の組織に捕らえられ、【陵辱】されたという記憶の片隅に無理やり押し込んでいた過去があった。
何とか隙をついて脱走できたが、あと数日脱出が遅れたら腹上死しちまうところだった。
避妊具なんざつけてもらえず、全部膣内に出させられたからもしや…とは思っていたが。
ただ、この件は仲間たちには「捕らえられたが、自力で脱出した」としか報告していなかったから真実は俺とコイツと他若干名しか知らないだろう。
てかこんな事喋ったらヒーローの沽券というヤツに関わる。
仲間の反応が気になってふと周りを見ると、心底驚いた表情の同僚A(レッド)と同僚B(ピンク)。
けっ。くっ付いてるお前らと違って、あの時は【溜まってた】んだよ。逆レイプだろうと出ちまったものは仕方ないだろ。
しかもお前ら、俺が犯されている時に助けに来てくれなかったじゃないか。
しかしやっぱり声に出したらヒーローの沽券に関わるので無言を貫く。
ふと肩を叩かれ、振り返ると所長(司令)が一枚の紙を差し出していた。
「扶養者控除、無いとキツイだろう?」
司令、いろんな意味で大人な対応ありがとう。
「さて。この書類にサインした後、役所に提出しに行こう。あとは愛の巣探しだな。お互いの職場が近い方が良いだろう。」
「おいおい。その婚姻届に対して文句大有りだが、それ以上に突っ込みたいことがある。まだ【あの組織】で働くつもりかよ。」
「…ふ。己が思うまま、我侭に生きる事が私のジャスティスだ。君が私を満たし尽くして私の注意を引き付けてくれるなら話は別だが…。」
…所長、レッド、ピンク。そんな期待に満ちた目で俺を見るな。
全く俺の人生は世界平和の礎か、人柱か。
…後日談…
「ねぇレッド。今日の怪人、やたらと強くない?」
「そうだなピンク。…なぁブルー。」
「…ノーコメントだ。」
「ちょっと!また喧嘩したの!?何やってんのよ!?」
「くっ。ノーコメントだ。」
(→
次話)
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