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(7-291)

作者:XXXR氏
備考1:女幹部
備考2:ガンレンジャーシリーズのクリスマスネタ。



「メリークリスマス!」
「……」
「……」
「……」
せっかく景気よくかました年末の挨拶に、沈黙で返される。これはキツい。
そもそも「メリークリスマス」などという挨拶自体が恥ずかしいのに、無視
されたりしたら居たたまれなくなるではないか。
「……あの、燕さん? オレ今寂しくて恥ずかしくて、このまま帰っちゃい
そうです」
「ふむ、それは困る。しかしだな大介。その挨拶は時にも場所にもそぐわな
いように感じるのだが?」
「いや、それは……仕方ないじゃん」
ここは佐々木燕の実家、「燕一刀流剣術道場」。その道場のど真ん中であ
る。確かにクリスマスという如何にも洋風なイベントとは、ここは無縁だろ
う。しかしそれ以上に問題なのは、今日の日付である。

今日は12月26日深夜。日付が変わって27日になった所であった。


そもそも彼らが25日に何をしていたのか、そこから説明せねばなるまい。
彼らだって本来ならば、クリスマス当日にパーティーを行うはずだったの
だ。それもメンバー全員に基地の職員達も含めた、大規模なイベントを計画
していたのである。しかしその予定は――いや、ある意味ではこれこそが予
定通り、もとい予定調和なのかもしれないが――頓挫させられた。
やっぱりしっかりいつも通り、NOMの仕業である。ホワイトデーを邪魔さ
れたように、体育祭を邪魔されたように、挙げ句の果てには追試まで邪魔さ
れたように、その日も奴らがテロを起こしたのだ。それもそのテロとは、サ
ンタのコスプレをしたガラクタ達が、トナカイシャドウなる怪人が引くそり
に乗り、何故か一つ一つ綺麗にラッピングされた爆竹(『爆弾』ではない辺
りがちょっと腹が立つ)をばらまくというものであった。
「……冗談も大概にしろって感じだったな」
「実にタチの悪い、悪夢のような光景だったな」
ひたすら逃げ回る敵を追いかけ続け、ついに撃破した時には既に12時過
ぎ。こんな事ならイブにパーティーをすれば良かったと後悔しても、時既に
遅し。疲れ切った彼らは倒れるように眠りにつき、目が覚めたのは26日の
昼過ぎであった。

ちなみにその頃、NOMの幹部陣は、スポンサーの一人に依頼された「とあ
る企業のクリスマス商戦の妨害」という依頼をガラクタ達に任せ、自分達は
のんびりシャンパンを飲んでいたのであるが……彼らは知らない方が良いだ
ろう。

「でもさ、このまま今年が終わるなんて何か悔しいじゃないか。だからオレ
達だけでもそれっぽい事をやろうかなって」
そう言いながら大介は背負った袋を開け、次々と中のアイテムを取り出して
いく。植木サイズの小さなツリー、コンビニで売っている二切れセットのケ
ーキ、お総菜屋さんで買ったらしいローストチキン、特撮ヒーローがプリン
トされた安っぽいシャンメリー。その姿はまるでサンタクロースであるが、
出てくる品物には皆「半額」だとか「処分特価」などと書かれたシールが貼
ってあった。
「なるほど。察するに、目が覚めたお前はパーティーをやっていない事を思
い出し、しかし皆帰った後で会場も引き払われ、諦めきれずに町中駆けずり
回って、在庫処分セールの商品をかき集めて来た訳か」
「言うなよ、ますます侘びしくなるだろうが」


そう言いながらも燕は奥から食器を用意し、大介は手早くケーキを移し替え
る。ポンっという音を立ててシャンメリーの栓を抜き、ビールのロゴが入っ
たコップになみなみと注いだ。ロウソク風のデザインのライトを灯せば、ま
あそれなりにクリスマスっぽいものは一式揃ったと言えるだろう。
「だがまあ、おかげで二人きりの静かな食事会になった……と思えば悪くも
ないか」
「そうそう、前向きに考えようぜ」
そして二人はコップを手に取り、微笑みあってチン、とぶつけあった。
「改めて、メリークリスマス」
「ああ、……メリークリスマス」



「しかし大介。やはりもう少しそれっぽいものが欲しいな」
「それっぽいものって何だよ」
「ふむ、これはこの間読んだ雑誌に書いてあった事なのだが」
「出たよ『この間読んだ雑誌』。お前そういう記事を鵜呑みにするのはやめ
ろってあれほど……」
「聖夜というものはだ、男と女にとって『勝負の時』だそうだな?」
「……あの~、燕さん?」
「しかもクリスマスというのは、聖者の『誕生』を祝う祭りなのだろう?」
「もしもし、オレの話聞いてる?」
「ここは一つ、『性夜』らしくいこうではないか」
「それも例の雑誌の知識ですか? いや、だから手をワキワキさせるのはや
めろって……いや、ホント勘弁して。ゴム持ってないから……必要ない!?
 言うと思ったわ!! やめてってば!! 心の準備が……あ、ア、アー
ッ!!!」
そんな二人を、師走の星空が見守っていた。
その夜空に一つ、キラリと星が流れたように見えたが……気のせいだろう、
うん。

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