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作者:4代目スレ575氏
備考1:女幹部×ヒーロー
備考2:独白,非エロ,掌編
~透明~
コッ、コッ……。
足音が聞こえてくる。振り向けばそこに誰か居るのかもしれない。
でも、今の私は振り向くことはない。
「来ないで!」
コッ……。
足音が止まった。同時に私の心に安心が広がるのと同時に、言い表せない感情が呼び起こされる。
「止められなかった……」
恐れるように私は自分の震える右手を見る。赤く血に染まった手が、私の内なる恐怖を煽り立てる。
このまま、この血塗られた手も何もかも消えてしまえば良いのに……。
「もう良い……」
「あっ……」
後ろから大きな腕が私を包み込んだ。大きな右腕が、その手が私の赤い手を握り締める。
私は頬を赤らめる。赤らめるべきではないのに、私が女として恥ずかしがる事などあってはいけないのに。
何故私達は敵同士なのだろう……悲しむ感情など捨てたはずだった。
「俺がお前を止めてやる。お前を何時までも見ていてやる」
すがるように私はその右手を握り締める。赤い血で染まった私の手……。
手が赤く染まった時、私は何時も惨劇の中心に立っていた。
静かな時の中で、私はたった一人でその場に居た……誰も私を見てはくれない。
私を見た者は皆消える……私を見る者が居なければ、私は透明と同じ……。
「ねぇ……私が見える?」
久しぶりの感覚、目頭が熱い胸が苦しい。答えて欲しい、貴方に……。
「俺は……」
振り向くと暖かい感触が私の唇を塞いだ。その感覚が離れて、私はその声を聞く。
――何時でもお前を見ているよ。
初めて透明な私に色がついた気がした……。
了
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